2015年12月19日土曜日

ヴェーダの結婚観(ヤッニャ・サンヨーガ)


ムンダカ・ウパニシャッドのマントラ(1.2.7)で、
「ヴェーダの儀式に必要な18の要素」という言及があります。

18の要素とは、 4つのヴェーダからそれぞれ4人ずつ、16人の司祭。
それと、ヤジャマーナ(儀式をする本人、その人の名前で儀式がされる。ダクシナを払う人)が1人、
それと、ヤジャマーナの妻、パットニー。
儀式で得たプンニャ(徳)は、ヤジャマーナと妻で、半々だとヴェーダは教えているそうです。


ヴェーダの教える人生は、受精からお葬式まで、全てが儀式です。
生まれてから死ぬまで、決められた儀式を一つずつ順番にこなしていかなければなりません。

結婚もその一つです。

ヴェーダの文化では、人間は徳を積み、人間として成長するに、結婚をします。

徳を積むには祈りの儀式をしなくてはなりません。
儀式をするには、結婚をしなくてはなりません。
結婚して始めて、儀式をする義務と権利が生まれるのです。

それゆえに、結婚するのです。 
結婚がゴールでは全く無いのです。

結婚は、人間として成長するための、手段。

結婚して始めて人生の試練が始まるのです。

結婚したら、妻も夫も、参加する形は違えど、両方が儀式に参加しなくてはならない。

面白い例に、精製バター(ギー)は 、妻の目に触れてもらって、
やっと儀式で使えるようにお清めされたことになる、という決まりもあります。

ヴェーダの文化では、妻は「パットニー」と呼ばれます。
夫は「パティ」。

パーニニ文法では、「パティ(夫)」という言葉から、
「パットニー(妻)」という言葉を派生させます。
その時の文法的決まりが、
「ヤッニャサンヨーゲー(यज्ञयोगे [yajñasaṃyoge])」
パーニニ・スートラ4.1.33

ヤッニャ(
यज्ञ [yajña])とは、ヴェーダの儀式。
サンヨーガ(योग [saṃyoga]とは、くっつくこと。

意味はふたつあり、
1. ヴェーダの儀式を通して、ヴェーダ的に正式に婚姻関係を結んだ人。
2.ヴェーダの儀式をする為に、婚姻関係を結んだ人。

現代日本の結婚観とは、かなり違う結婚観です。


16人の司祭の説明はこちら:

現在執筆している何冊かの文法書のうちのひとつで、
関連事項としてフットノートをまとめたので、こちらにも転記します。

षोडश ऋत्विजः
यजुर्वेदः             यजुर्गणः           अध्वर्युः, प्रतिप्रस्थाता, नेष्टा, उन्नेता
ऋग्वेदः             होतृगणः            होता, मैत्रावरुणः, अच्छावकः, ग्रावस्तुतः
सामवेदः             अद्गातृगणः         उद्गाता, प्रस्तोता, प्रतिहर्ता, सुब्रह्मण्यः
अथर्ववेदः          ब्रह्मगणः          ब्रह्मा, ब्राह्मणाच्छंसी, आग्नीधरः, पोता
 पत्नी यजमानश्चेति अष्टादश ।
16人のヴェーダの司祭 
4つそれぞれのヴェーダには、4人の司祭が必要。4人組でひとつのグループ(ガナ) となる。

ヤジュル・ヴェーダのグループは「ヤジュル・ガナ」。
メンバーはそれぞれ、
アッドヴァリユ、プラティプラスターナー、ネーシュター、ウンネター

リグ・ヴェーダのグループは「ホートゥル・ガナ」。

メンバーはそれぞれ、 
ホーター、マイットラーヴァルナ、アッチャーヴァカ、グラーヴァストゥタ


サーマ・ヴェーダのグループは「ウッガートゥル・ガナ」。
メンバーはそれぞれ、 
ウッガーター、プラストーター、プラティハルター、スッブラマンニャ

アタルヴァ・ヴェーダのグループは「ブランマ・ガナ」。
メンバーはそれぞれ、 
ブランマー、ブランマナーッチャムシー、アーグニーダラ、ポーター


これで16人、
そして、ヤジャマーナと、ヤジャマーナの妻、パットニー。
これで、コンプリートなのです。